西宮神社の開門神事「福男選び」は、毎年ニュースで見かけるお正月の風物詩です。
表大門が開いた瞬間、参拝者が一斉に飛び出して本殿まで駆け抜ける光景は、何度見ても迫力があります。
一方で、「西宮神社の福男選びって、そもそもいつから始まった行事なのか」「福男に選ばれた人は、その後どんな一年を過ごすのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
起源を説明する記事によって「江戸時代から」「昭和から」と表現が違うこともあり、余計に分かりにくく感じられます。
この記事では、西宮神社の福男選びはいつから始まったのかという疑問を軸に、西宮神社の福男選びの歴史を三つの段階に整理し、さらに福男になった方のその後についても、代表的なエピソードと共に分かりやすく解説します。
最後まで読んでいただければ、十日えびすの中で福男選びがどのような意味を持つのか、自分はどのように関わると楽しめるのかが具体的にイメージできるはずです。
西宮神社の福男選びとは?まずは全体像を整理
十日えびすと開門神事福男選びの関係
西宮神社は、全国にあるえびす神社の総本社にあたる神社です。
1月9日から11日にかけて行われる「十日えびす」は、商売繁盛や漁業、五穀豊穣を祈る大きな祭礼で、なかでも阪神間では「えべっさん」として非常に親しまれています。
この三日間は、
- 9日:宵えびす
- 10日:本えびす
- 11日:残り福
と呼ばれ、特に本えびすにあたる10日の早朝に行われるのが「開門神事福男選び」です。
いつ・どこで・どうやって行われる行事なのか
開門神事福男選びは、毎年1月10日の午前6時頃、表大門(赤門)が開かれた瞬間にスタートします。
参拝者は約200〜230メートル先の本殿を目指して走り、一番から三番までに到着した人がその年の「福男」として認定されます。
走るのは境内の参道ですが、途中には右に大きく曲がる「てんびんカーブ」や、石畳のスロープなど、足元に気をつけたいポイントもあります。
コース自体は短距離の全力疾走ですが、真冬の早朝であること、足場が完全な陸上トラックではないことを考えると、なかなかハードな挑戦です。
参加者数・抽選方法・副賞の概要
近年は人気が高まり、当日は5,000人前後の参拝者が参加します。
ただし、全員が同じ位置からスタートするわけではなく、事前抽選で決まる先頭ブロックが大きなカギになります。
抽選は1月9日の夜に行われ、先着1,500人程度に抽選券が配られたうえで、最前列とその次の列に並べる人が決まります。
この抽選に通らなかった人も走ることはできますが、どうしてもスタート位置でのハンデは大きくなります。
福男に選ばれた三人には、えびす様の御神像や特別な福笹、日本酒の樽、米俵、えびすビール、海産物など、縁起の良い副賞が授与されます。
それだけでなく、その年の「顔」として、各種行事やメディアへの登場機会も増えるのが特徴です。
西宮神社の福男選びはいつから始まった?歴史を3つの段階で解説
ここからは福男がいつから始まったかについて、歴史を3つの段階に分けて見ていきます。
1、江戸時代の「走り参り」から始まった信仰のかたち
福男選びの前身は、江戸時代に自然発生的に始まったとされる「走り参り」「門開け行事」です。
十日えびすの前夜、氏子たちは「忌籠り(いごもり)」といって、神様が市中を巡る時間帯には家から出ず、静かに過ごす習慣がありました。翌朝、門が開いて忌籠りが解けると、「一刻も早くえべっさんにお参りしたい」という思いから、参拝者が我先にと本殿を目指して走り出した、というのが大まかな流れです。
当初は「誰が一番か」を公的に決めるものではなく、素朴な信仰心から自然と生まれた競走でした。
この段階で「福男選び」という名前はまだなく、あくまで「開門の瞬間に走り参る人々」という姿があったと考えられます。
2、昭和15年に「福男選び」が誕生した背景
「福男」という言葉が公式に使われ始めるのは昭和期に入ってからです。
西宮市や西宮神社の資料によると、昭和初期には毎年のように一番乗りをする参拝者がいて、その人が高齢になり、若い同僚に後を託したところ、上位三人が同じ職場の仲間だったという出来事がありました。
このエピソードに人々が感動し、「福男」と称えたことをきっかけに、昭和15年(1940年)からは上位三人を正式に「福男」と認定するようになったと伝えられています。
つまり、
- 江戸時代:走り参り(門開け行事)として自然発生
- 昭和15年:上位三人を「福男」として公式に認定
という二段構えで、「いつから」という問いに答えることができます。
3、戦争による中断と、昭和28年の復活
福男選びは昭和20年の空襲で西宮神社が大きな被害を受けたこともあり、戦時中に中断を余儀なくされました。
社殿は焼失し、戦後しばらくは仮本殿での祭礼が続きます。
その後、昭和24年に南門が新設されるなど境内整備が進み、昭和28年(1953年)に福男選びが復活。
当初の参加者は十数人程度と、現在の5,000人規模からすると非常に静かなものだったと記録されています。
高度経済成長期を経て参拝者は増加し、昭和後期から平成にかけてはテレビ中継なども行われ、全国区の知名度を持つ行事へと変化していきました。
4、現在の抽選制と安全対策が整ったスタイル
参加者が増えるにつれて、安全面への配慮が大きな課題となりました。
そのため、現在では前日夜に先着1,500人程度を対象とした抽選を行い、最前列ブロック108人、その後ろのブロックも人数を絞ってスタート位置を決めています。
また、転倒や接触事故を防ぐため、コース整備や救護体制、誘導スタッフの配置など、安全運営のための仕組みが整えられてきました。
こうした工夫によって、信仰行事としての姿を保ちつつ、現代の大規模イベントとしての側面にも対応していると言えます。
なぜ走るのか?福男選びが持つ意味とルール
忌籠りの風習と「一刻も早く参拝したい」という思い
そもそも、なぜここまで激しい「走り参り」になったのかは、忌籠りの風習と深く関わっています。
先ほど触れたように、かつて氏子たちは十日えびすの前夜を静かに過ごし、神様の巡行が終わるまで家から出ないようにしていました。
その「我慢」の時間を経て、開門の瞬間に一斉に走り出すという行動は、「できるだけ早く神様に今年最初のお参りをしたい」という信仰心の表れだと考えられます。
単なる競走というより、最初にお参りできることを喜ぶ気持ちが、結果として競争の形になったと理解すると、この行事の雰囲気が少し違って見えてきます。
抽選方法・スタート位置・参加条件の基本
現在の福男選びに参加するには、まず1月9日の夜に行われる抽選会への参加が必要です。
抽選会では、先着1,500人ほどに抽選券が配られ、その中から最前列と次の列に並べる人が決まります。
スタートラインは大きくブロック分けされており、先頭ブロックに入れた人ほど有利になります。
ただし、ブロックに関係なく、走るためには体調管理や防寒対策が欠かせません。
冷え込む早朝に人混みの中を走るため、十分な準備運動や、滑りにくい靴を選ぶことも大切です。
参加資格については、基本的に性別・年齢の制限はなく、過去には女性や年配の参加者も福男(福女として紹介されることも)になった例があります。
ただし、未成年の場合は保護者と相談し、安全面をよく考えたうえで参加判断をするのが現実的です。
安全面への配慮と、参加者が守りたいマナー
大勢で一斉に走る以上、完全にリスクをゼロにすることはできません。
そのため、神社側はコースの誘導や医療スタッフの待機など、安全運営に力を入れていますが、参加者一人ひとりのマナーも非常に重要です。
例えば、
- 体調が悪い時は無理に参加しない
- 転倒した人を踏みつけないよう、周囲に気を配る
- 禁止されている危険な服装・履物(サンダルなど)を避ける
といった基本を守ることは、行事全体の雰囲気を守ることにもつながります。
「一番福」だけを狙うのではなく、参加者全員が無事に本殿にたどり着き、お参りを終えることも大切なゴールだと考えたいところです。
福男に選ばれた人のその後は?1年の流れとリアルなエピソード
ここからは福男に選ばれた人は、その一年をどのように過ごしているのでしょうか。
1年間、福男に求められる役割(祭礼・イベント参加など)
福男は、単に「一番早くゴールした人」というだけではありません。
西宮神社の行事や地域のイベントに参加し、来場者を迎えたり、時には祭礼で重要な役割を担ったりすることもあります。
例えば、
- 神社の祭りや餅つきへの参加
- 商店街の行事で、時代装束をまとって練り歩く
- 受験生応援イベントや、企業キャンペーンへのゲスト参加
など、その年によって依頼される内容はさまざまです。
福男本人が出演することで人が集まり、イベントが盛り上がるため、ある意味では「地域のPRアンバサダー」のような役割を果たしていると言えるでしょう。
メディア出演・仕事・人間関係に起こりやすい変化
福男の「その後」でまず目立つのは、メディア露出の増加です。
当日朝からテレビの生中継や新聞・ネットニュースの取材が入り、その日のうちに全国に名前と顔が知られるケースも少なくありません。
過去の事例を見ると、
- 社会人野球選手が一番福になり、始球式への登板やスポンサーとの縁が広がった
- 大学・高校の陸上部員が注目され、チーム全体のモチベーションが上がった
- 芸人やタレントが福男をきっかけに仕事の幅を広げた
といったポジティブな変化が紹介されています。
また、企業の人事異動や取引先との会話の中で話題になることも多く、「福男だった人」という肩書きが、思わぬ形で人脈のきっかけになる場合もあります。
良いことだけではない?プレッシャーやトラブル例も知っておく
一方で、福男のその後は良いことばかりではありません。
注目を浴びるからこそ、多少のトラブルやプレッシャーを感じるケースも報じられています。
例えば、
- 行事への参加依頼が多く、学業や仕事との両立が大変になる
- SNSやネット上での反応が気になり、精神的な負担になる
- 一部の年では、行事中止や事故など、環境要因によって「思い描いていた一年」とは違う展開になる
といった「影」の部分も現実として存在します。
また、福男になったからといって、自動的に宝くじに当たるわけでも、恋愛や仕事が必ずうまくいくわけでもありません。
インタビューの中には、「良いことも悪いことも普通に起こったけれど、総合的には特別な一年だった」と振り返る人もいます。
重要なのは、「福男=一生涯の約束された幸福」ではなく、「一年間、多くの人に福を分ける役割を任された人」という受け止め方をすることです。
その視点に立つと、小さなトラブルや忙しさも“役目の一部”として前向きに受け止めやすくなります。
福男の「その後」と、日常の幸せとの付き合い方
福男経験者の話を総合すると、「福男になったことで自信がつき、前向きに挑戦できるようになった」という声が多く見られます。
年明け早々に大きな挑戦をやり切ったという体験は、その後の受験や就職、スポーツや仕事の場面で「自分ならできる」という感覚を支えてくれるのでしょう。
一方で、福男に選ばれなかった人も、その年の十日えびすでしっかりお参りし、商売や勉強、家族の健康などを願うことに変わりはありません。
「福男になれなかったから縁起が悪い」という考え方ではなく、福男を“代表選手”のように捉え、参加者全員・地域全体に福を分けてくれる存在として見守るのが、行事の趣旨に近いと考えられます。
これから参加してみたい人へ:雰囲気を楽しむためのポイント
初参加でも安心するための準備と心構え
福男選びへの参加を考えている場合は、まず自分の体力や健康状態を冷静に確認することが大切です。
短距離とはいえ、寒い中での全力疾走は思った以上に体に負担がかかります。
参加するなら、
- 10日ほど前から軽いランニングやストレッチで身体を慣らしておく
- 当日も十分な防寒と準備運動を行う
- ランニングシューズなど、滑りにくく足を守る靴を選ぶ
といった基本的な準備を心がけましょう。
また、抽選会や当日の詳細は年によって変わることがあるため、参加する年の公式情報を必ず確認しておくと安心です。
走らずに見守る楽しみ方と、家族連れでの過ごし方
福男選びは、走ることだけが楽しみ方ではありません。
開門前から周囲の熱気を味わい、太鼓の合図とともに門が開く瞬間を見届けるだけでも、迫力ある体験になります。
小さな子ども連れや高齢の家族と一緒なら、少し離れた場所から見学し、本殿への通常の参拝をゆっくり楽しむのも一つの方法です。
その後、境内や周辺の屋台で温かい食べ物を味わったり、福笹や吉兆の授与を受けたりすれば、家族全員にとって思い出深い一日になるでしょう。
十日えびす全体を楽しむ視点も持っておく
福男選びだけに注目しがちですが、十日えびす全体には、ほかにも見どころがたくさんあります。
福笹や熊手などの縁起物を授与してもらうこと、招福マグロに硬貨を貼り付けて願掛けをすること、さまざまな屋台グルメを味わうことなど、1日を通して楽しめる要素が揃っています。
「西宮神社のご利益・御朱印」や「十日えびすの歩き方」なども合わせてチェックしておけば、福男選びに参加する人も、見学する人も、より充実した参拝計画が立てやすくなります。
まとめ:歴史と「その後」を知ると、西宮神社の福男選びがもっと味わい深くなる
最後に、この記事で整理したポイントを振り返ります。
- 西宮神社の福男選びは、江戸時代の「走り参り」を起源とし、昭和15年から上位三人を「福男」と公式に認定する形が整った。戦時中の中断を経て、昭和28年に復活し、現在は抽選制と安全対策が整った大規模行事として続いている。
- 西宮神社の福男はいつから?という問いには、
- 信仰としては江戸時代
- 行事名としては昭和15年
- 現代的なスタイルとしては戦後復活以降
という三段階で答えると、全体像が理解しやすい。
- 西宮神社の福男がその後が気になる、についてはメディア露出や仕事の広がりなどのポジティブな面と、行事参加の責任やプレッシャーといった負担の両方が存在し、「福男に選ばれた一年をどう活かすか」が本人次第であることが分かる。
- 参加を考えている人は、体調や安全面に気を配り、抽選方法や当日の流れを把握したうえで無理のない形で挑戦することが大切。
- 走らない人にとっても、十日えびすの一部として福男選びを見守り、福笹や吉兆を授かり、屋台や祭礼の雰囲気を楽しむことで、十分にご利益と高揚感を味わえる行事である。
「いつから」「その後」という切り口で福男選びを見ていくと、単なる“お正月の面白いニュース”ではなく、長い歴史と信仰の積み重ねの上にある行事だということが見えてきます。
西宮神社を訪れる機会があれば、こうした背景を思い出しながら、十日えびすと福男選びの時間を味わってみてください。

