大晦日が近づくと、「近所のお寺の除夜の鐘は、いったい何時から何時まで鳴るのだろう」と気になる方が多いのではないでしょうか。
子どもを連れて行っても大丈夫な時間なのか、終電に間に合うのか、寒さや騒音は大丈夫なのかなど、具体的にイメージできないと予定が立てづらいものです。
この記事では、「除夜の鐘は何時から何時まで?」という疑問に答えながら、一般的な時間帯の目安、寺院ごとに異なる3つのパターン、参加するときのマナーや持ち物、自宅で楽しむ方法までをまとめて解説します。
読んでいただくと、自分や家族の生活リズムに合わせて「どの時間帯に、どんなスタイルで除夜の鐘を楽しむか」が具体的にイメージできるはずです。
除夜の鐘とは?「除夜」の意味と108回の理由
「除夜」は大晦日の夜のこと
まずは、そもそも除夜の鐘とは何かを押さえておきましょう。
除夜の鐘は、日本の多くの寺院で行われている大晦日の伝統行事で、寺にある大きな鐘(梵鐘〈ぼんしょう〉)を打ち鳴らす儀式です。ゴーンという響きとともに一年の終わりを感じる、年末の風物詩になっています。
「除夜(じょや)」という言葉は、「除日(じょじつ)」=年の最後の日である大晦日の夜、という意味を持ちます。古い年を「除き」、新しい年を迎える夜であることから、この名前がつきました。
その夜に鳴らされる鐘だから「除夜の鐘」と呼ばれている、というわけです。
なぜ108回つくのか(代表的な2つの説)
除夜の鐘は「108回つく」とよく言われます。
この108という数字には、仏教的な意味付けがいくつかありますが、代表的なのは次の2つの考え方です。
ひとつは、「人間が持つ煩悩(ぼんのう)の数が108」とする考え方です。
煩悩とは、欲望・怒り・妬み・迷いなど、心をかき乱すさまざまな感情のことを指します。人間には、眼・耳・鼻・舌・身・意という六つの感覚の根本(六根)があり、それぞれが「好き・嫌い・どちらでもない」という三つの状態を取り、さらに「きれい・汚い」という二つのカテゴリに分けられる、といった組み合わせで計算すると108になる、という説がよく紹介されます。
もうひとつは、四苦八苦(しくはっく)から来る説です。
生・老・病・死の四苦と、愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦の八苦を合わせた四苦八苦を、掛け算の語呂合わせで4×9+8×9=108とするものです。
いずれの説にしても、「人の心を悩ませるものは数えきれないほど多い。それを象徴的に108という数字にまとめた」と理解するとイメージしやすいでしょう。
除夜の鐘を108回つくことには、「一年の終わりに108の煩悩を一つずつ洗い流し、清らかな心で新年を迎えましょう」という願いが込められています。
除夜の鐘は何時から何時まで?【まず結論】
多くの寺での目安は「23時ごろ〜0時過ぎ」
本題の「何時から何時まで?」について、まず結論からお伝えします。
多くの寺院では、除夜の鐘は大晦日の23時前後からつき始め、元日の0時を少し過ぎたあたりまで続けられることが一般的です。
観光情報サイトや寺院の案内でも、「23時頃から深夜0時を挟んで行われる」「23時30分ごろから開始し、0時過ぎまで」といった説明がよく見られます。
また、「参拝者も一緒に鐘をつく」ようなお寺では、より多くの人が順番に鐘をつけるよう、22時30分ごろから始めて1時前後まで続けるケースもあります。
一方で、小さな寺や住宅街の中にある寺などは、近隣への配慮から開始・終了時間を短めに設定したり、0時前には終えるなど、地域事情に合わせて柔軟に運営していることも少なくありません。
3つのつき方パターンで時間帯が変わる
除夜の鐘の時間帯は、鐘を何回・どのタイミングでつくかによっても変わります。代表的には、次の3つのパターンがあります。
- パターン1:107回を旧年中につき、108回目を新年につく
大晦日のうちに107回ついて煩悩を払い、新年最初の1回を新しい年のスタートとして鳴らすスタイルです。
1分に1回のペースでつくと仮定すると、107回には約1時間47分かかります。22時30分〜23時ごろから始め、0時を少し過ぎた頃に108回目が鳴る、という時間帯になることが多いです。 - パターン2:午前0時の年明けと同時に1回目をつき始める
元日の0時のカウントダウンと同時に1打目をつき、その後108回を新年側でつき続けるパターンです。テレビ中継で見るような「0時になった瞬間にゴーンと鳴る」イメージはこちらに近いと言えます。 - パターン3:0時にこだわらず、年末から年始にまたいでつく
「0時ちょうど」をあまり重視せず、23時台から0時台にかけて、比較的自由に108回つくスタイルです。住職や寺の事情、参拝者の数に合わせて時間を調整しやすい方法でもあります。
自分が行きたいお寺がどのパターンなのかによって、「何時に行けば良いか」「何時ごろ終わるか」の目安が変わってきます。
昼や夕方に行う「除夕の鐘」というケースも
近年は、深夜の騒音問題や高齢化への配慮から、昼や夕方に鐘をつく「除夕(じょせき)の鐘」を行う寺も増えています。
たとえば、夕方18時ごろから鐘をついて参拝を受け付けたり、日中に家族連れ向けの鐘つきイベントを行ったりと、時間帯を早めるお寺がニュースでも紹介されています。
このような寺では、深夜の除夜の鐘は行わず、代わりに日中の「除夕の鐘」として108回(もしくはそれ以上)つくこともあります。
小さな子どもや高齢の家族と一緒に安全に参加できる選択肢として、覚えておくと便利です。
自分の地域のお寺は何時から?時間の調べ方とタイムライン例
公式サイト・SNS・張り紙で確認するポイント
除夜の鐘の時間帯は寺院ごとにかなり違うため、「〇〇時から〇〇時まで」と一律には断言できません。実際に参加する場合は、次のような情報源をチェックしておくと安心です。
- 寺院の公式サイトのお知らせ欄
- 寺院の公式SNS(X、Instagram、Facebookなど)
- 山門や掲示板に貼り出される案内ポスター
- 地域の広報誌や観光協会のサイト
確認するときは、次の点を意識して見ておくと、当日の動きがイメージしやすくなります。
- 鐘をつき始める時間(例:22:30〜、23:00〜)
- 一般参加ができるかどうか、整理券の有無
- 終了予定時刻の目安(例:0:30ごろまで、1:00ごろまで)
- 雨天や荒天時の対応、コロナ禍以降の人数制限の有無
こうした情報は、事前に電話で問い合わせると教えてもらえる場合もあります。
参加方法で変わる「到着しておきたい時間」
同じ「23時開始」と書かれていても、参加方法によって、現地に到着しておきたい時間は変わります。目安としては、次のように考えると良いでしょう。
- 整理券制の場合
→ 整理券配布時間の少し前には到着しておく。
(例)23時から整理券配布なら、22時30分〜45分ごろ到着を目安に。 - 先着順・並んだ人から順番に鐘をつく場合
→ 行列の長さが読みにくいので、開始時刻の30〜60分前に着いておくと安心です。 - 住職や僧侶だけが鐘をつく場合
→ 「聞くだけ」「新年のご挨拶に行く」目的なら、0時前後〜0時少し過ぎに合わせて足を運ぶ、という選択もあり得ます。
参拝者が多い大寺院ほど、早めの行動が必要になります。逆に、地域の小さな寺では、0時近くにふらっと行っても、まだ鐘つきが続いていて参加できることもあります。
タイプ別・タイムラインの具体例
イメージしやすいように、いくつかのケースで、当日のタイムライン例をあげてみます。
- 子ども連れで早めに帰りたい場合(除夕の鐘または早め開始の寺)
18:00 夕食・年越しそば
19:00 夕方に鐘をつかせてくれる寺へ出発
19:30〜20:00 鐘つき体験・参拝
21:00ごろ 帰宅して、テレビやラジオでカウントダウン - 大人だけで、23時〜0時をメインに楽しみたい場合
21:00 自宅でゆっくり過ごす
22:15 寺へ向けて出発
22:45 寺に到着、行列に並ぶ
23:30〜0:15 鐘をつく・鐘の音を聞きながら年越し
0:30〜1:00 初詣・帰宅 - 終電までに帰りたい一人参加の場合
21:30 家を出て、22:00台に一度鐘を聞きに行く
23:30 早めに切り上げて最寄り駅へ
終電前に帰宅
こうしたタイムラインを頭に思い描きながら、お寺の案内に書かれている時間を照らし合わせてみると、自分に合った参加方法が選びやすくなります。
除夜の鐘をつきに行くときのマナーと持ち物・服装
基本のマナーと鐘をつく流れ
寺によって細かいルールは異なりますが、一般的な「鐘をつくときの流れ」は共通しています。
- 自分の順番が来たら、鐘の前に進み、静かに合掌して一礼します。
- 撞木(しゅもく)と呼ばれる丸太の棒に結ばれた紐を両手で持ち、後ろへ引いて勢いをつけます。
- タイミングを合わせて鐘に当て、音が鳴り響くのを感じながら、心の中で一年の感謝や新年の願いを思い浮かべます。
- 撞き終わったら、再び合掌して一礼し、次の人に場所を譲ります。
力強くつき過ぎると鐘や撞木を痛めてしまうことがあるため、「大きな音を出そう」と力むよりも、「心を込めて撞く」ことを大切にしましょう。
また、多くの場合、一人が鐘をつけるのは1回だけです。ルールは係の方が案内してくれることが多いので、指示に従えば問題ありません。
なお、本堂への参拝と鐘つきの順番にも注意が必要です。
一般的には「先に鐘をつき、そのあとで本堂にお参りする」のがマナーとされています。参拝を済ませてから戻って鐘をつく行為は「戻り鐘」と呼ばれ、縁起が良くないとされる場合があるためです。
防寒・持ち物・服装のポイント
大晦日の夜のお寺は、とても冷え込みます。特に23時〜1時ごろは、1年の中でも気温が下がりやすい時間帯です。快適に過ごすためには、次のような準備をしておくと安心です。
- ダウンコートや厚手のコート、マフラー、手袋、帽子など、真冬仕様の防寒着
- 長時間立って並ぶことを想定した、歩きやすい靴(滑りにくいスニーカーなど)
- カイロ(貼るタイプ・持つタイプの両方があると便利)
- 小さめのカバンや斜め掛けバッグ(手がふさがらないように)
- スマホの充電(終電や地図確認のため)
寺によっては、境内で甘酒や温かいお茶を振る舞ってくれることもありますが、期待し過ぎず、「自分でしっかり防寒する」前提で準備しておきましょう。
混雑する時間帯と並び方のコツ
多くの人が「0時前後に鐘をつきたい」と考えるため、23時30分〜0時ごろにかけては、どうしても行列が長くなりがちです。
混雑を少しでも避けたい場合は、次のような工夫ができます。
- 23時より前に到着して早めに並び、比較的落ち着いた雰囲気の中で鐘をつく。
- 既に鐘つきが始まっている寺なら、22時台や23時前半のすいている時間を狙う。
- あえて「0時ちょうど」にこだわらず、0時10分〜30分ごろの列の落ち着きを待ってから並ぶ。
また、列に並ぶときは、周囲の人との距離や順番を守ることが大切です。特に、暗い場所や階段がある鐘楼では、足元に注意しながらゆっくり進みましょう。
家で聞くだけでもOK。時間に合わせて楽しむアイデア
テレビ・ラジオ・配信で鐘の時間をチェックする
仕事や体調、家庭の事情などで、深夜に外出するのが難しい方も少なくありません。そんなときは、家にいながら除夜の鐘の時間を楽しむ方法もあります。
NHKの「ゆく年くる年」をはじめ、多くのテレビ局・ラジオ局が、大晦日から元日にかけて全国各地の寺院の除夜の鐘の様子を放送しています。
放送時間は23時45分〜0時15分ごろに集中していることが多く、テレビ番組表やラジオのタイムテーブルをチェックすれば、除夜の鐘の音が鳴る時間の目安を事前に知ることができます。
近年は、寺院が独自にYouTubeやライブ配信で鐘つきの様子を公開するケースも見られます。
「〇〇寺 除夜の鐘 ライブ配信」などで検索し、自宅で静かに視聴しながら新年を迎えるのも、現代らしい楽しみ方と言えるでしょう。
鐘の時間に合わせて一年を振り返るミニ儀式
家で鐘の音を聞く場合でも、「時間の使い方」を少し工夫すると、年越しの満足度がぐっと上がります。例えば、次のようなミニ儀式を取り入れてみるのはいかがでしょうか。
- 鐘が鳴り始める23時45分〜0時15分ごろの30分間だけ、スマホを触らずに静かに過ごす。
- 1回鐘が鳴るごとに、今年あった出来事を一つずつ思い出し、「ありがとう」と心の中でつぶやく。
- 家族やパートナーと一緒に、「今年一番印象に残った出来事」「来年やってみたいこと」を一つずつシェアする。
外に出られない年でも、時間の区切りを意識して過ごすことで、除夜の鐘の意味である「一年の締めくくりと新年のスタート」を、しっかりと感じることができます。
除夜の鐘の時間についてよくある質問
Q:途中から行っても鐘をつかせてもらえますか?
A:寺の規模や参加方法によって変わります。
整理券制の場合は、配布時間を過ぎると鐘をつけないことが多いです。一方、先着順で108回以上つく寺では、遅い時間に行っても、まだ順番が回ってくることもあります。
「絶対に自分も鐘をつきたい」という場合は、整理券配布時間や開始時刻の30〜60分前に到着するのが安全です。
Q:子どもや高齢の家族は、何時ごろまでが安心ですか?
A:一般的には、22時〜0時前後が一つの目安です。
子どもや高齢者にとって、0時を過ぎてからの外出は負担が大きくなります。夕方の除夕の鐘や、22時台〜23時台の早めの時間帯に参加できる寺を選ぶと、体に負担をかけずに雰囲気を味わいやすくなります。
どうしても0時をまたいで参加したい場合は、昼間にしっかり休ませる、防寒を徹底する、あまり長時間並ばないようにするなどの工夫をしましょう。
Q:近所迷惑になるほど除夜の鐘はうるさいのでは?
A:報道などで話題になることもありますが、調査によると、「迷惑だと感じたことがある」という人は少数派だった、という結果もあります。
とはいえ、住宅事情や個々人の感覚によって受け止め方が異なるのも事実です。
そのため、多くの寺院は、
- 鐘をつく時間帯を短めにする
- 0時前に終える
- 日中の除夕の鐘に切り替える
といった形で、近隣への配慮を行っています。
参加する側としては、深夜に大声で騒がない、帰り道で大きな音を立てないなど、周囲への気遣いを忘れずにいたいところです。
まとめ:自分に合った「除夜の鐘の時間」の選び方
この記事では、「除夜の鐘は何時から何時まで?」というテーマで、一般的な時間帯や寺院ごとの3つのパターン、参加の仕方を解説しました。
ポイントを改めて整理すると、次のようになります。
- 多くの寺では、大晦日の23時ごろ〜元日の0時過ぎにかけて鐘をつき、合計108回を目安としている。
- つき方には「107回を旧年中+1回を新年」「0時から108回」「0時にこだわらない」などのパターンがあり、時間帯は寺ごとに違う。
- 深夜の騒音や高齢化への配慮から、日中や夕方に行う「除夕の鐘」を採用する寺もある。
- 実際に参加する際は、公式サイトやSNS、掲示などで開始・終了時間、整理券の有無、一般参加の可否を必ず確認する。
- 子ども連れや高齢の家族と楽しむなら、早めの時間帯や除夕の鐘、家での視聴など、負担の少ない方法を選ぶのも一つの選択肢。
- 家にいながらでも、テレビ・ラジオ・配信で鐘の時間を意識し、一年を振り返る時間を持つことで、除夜の鐘の意味を味わうことができる。
除夜の鐘の本質は、「何時から何時まで鳴るか」ということよりも、「その時間をどう受け止めるか」にあります。
自分や家族の体調や生活リズムに合わせて無理のないスタイルを選びつつ、鐘の音に耳を澄ませながら、この一年を静かに振り返り、新しい年に向けて気持ちを整える時間にしてみてください。

